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山田洋次監督の『故郷』を観る

11 29, 2009
故郷

久しぶりに映画を観に行った。呉映画サークルが主催する上映会。この呉映画サークル、何と今年で40周年を迎えるという。1969年から今日まで、ほぼ2ヶ月に1回のペースで呉シネマを借り切り、広島では観る機会が少ないマイナーな映画や、さまざまな名作映画を上映してきた。おかげで僕らは地方に暮らしながらも、近くで映画に触れるチャンスに恵まれている。

今回の40周年記念例会は、山田洋次監督特集と銘打って、『故郷』『家族』『同胞』の3本立て。どれも1970年代の映画。まずシネコンなんかでは観ることはできない映画だ。僕は仕事を切り上げて、最終の『故郷』の上映に何とか間に合うように映画館に滑り込む。

『故郷』は1972年に制作された映画。舞台は江田島の隣の島、倉橋島だ。1972年といえば、僕はいくつだっけ。そう、多分6歳くらい。当然、子供の頃の見覚えある懐かしい風景に出会うことになった。倉橋と呉を結ぶ音戸大橋は、まだピカピカの出来立て。倉橋と江田島を結ぶ早瀬大橋は、まだ建設中だった。車の姿はまばらで、舗装されていない道路にボンネットバスが走っている。島の人々の主な交通手段は、やっと船から車に移ろうとしている時代。でもこれ、実はたった40年ほど前のことなのだ。

映画の中で、護岸工事のために石を運ぶ「石船」で生計をたてる精一(井川比佐志)、民子(倍賞千恵子)の夫婦。漁師だった父(笠智衆)の面倒を見ながら、二人の小さな子供と共につつましやかに暮らしている。時が流れる中で船は老朽化してくる。二人の船は木造船で、せいぜい10tも積めばいいところ。時代は鋼船、船はどんどん大型化し300t積みの石船が現れ、二人の船の何十倍もの石を運んでいく。そして、精一はついに船を捨て、尾道の造船所で働く決断をする。

尾道に行く前に、造船所で働くことに決めた精一が、友人の魚屋、松下(渥美清)と話すシーンがある。流れ者の松下は、まあいわば寅さんみたいな役回りだ。松下は言う、「そうか、とうとう労働者になっちゃうわけだ。じゃあ、あんたはもう船長さんじゃなくなっちゃうんだねえ」。「船長も労働者も一緒じゃろうが。どこが違うんじゃ?」。仕事は仕事、何をやっても同じことだろうと精一は言う。それに松下はこう応える。「いいや、違うね。全然違う」「まず労働者より船長さんの方が賃が安い。そして、労働者より船長さんの方が仕事がきつい」。そう言って笑う二人。最後に松下はこう呟く。「でもね、やっぱり船長さんは船長さんなんだよね」。

最後の航海の日、宇品に石を運んだ帰りの海で、浜で焼かれる古い木造船を見た精一は、民子に涙を見せないように嗚咽しながら問いかける。

「民子、大きなもんたぁ、なんのことかのお。みんな言うとったじゃろうが。時代の流れじゃとか、大きなものには勝てんとか。ほいじゃが、そりゃあ、なんのことかいのお。大きなもんたぁ、何を指すんかいのお。何でわしら、大きなものには勝てんのかのお。なんでわしゃ、なんでわしゃ、この石船の仕事を、わしとお前で、わしの好きな海で、この仕事を続けていかれんのかいのお」。

大きなもの、とは近代化のことかもしれないし、資本主義社会やグローバリズムのことかもしれない。大漁旗を掲げて船上で酒盛りをしながら、宮島の管弦祭に向かうのどかな船の姿も、今はもうない。かつての300t積みの石船は、さらに大きな2000t積みの石船に取って代わられた。もちろん、精一が乗っていたような木造船の石船は、今は1隻もいない。島の斜面を彩っていた段々畑も、今はもうまばらだ。今も島の多くの人々は精一と同じように、仕事を求めて生まれた島を出て行く。

凄まじいスピードで時代は変わっていく。映画の中で今と変わっていないものは、美しい瀬戸内海の風景と、そこで額に汗して暮らす人々の顔だけだ。それだけは、多分この先何十年経っても変わらないんだろう。さて、僕は自分の生まれたこの島で何をしよう?大事な家族や友人のいるこの島で、僕は一体何をしようか。

ちぴぴ

おや、どこかで見たような後ろ姿。

ちぴぴ

そう、Bridge 11号にも登場してくれた、4人の子供の母であり、僧侶(坊守)であり、シンガーソングライターの「ちぴぴ」です。

実はこの映画、彼女の強力な推薦で今回の上映が決まったのだとか。12/6に江田島環境館で予定されている、上関原発建設問題を考える映画『ぶんぶん通信』の上映も、彼女が駆け回って実現に漕ぎつけたものです。何かが始まるのは、いつもたったひとりの人間が何かに向かって動き始めるから。それに共鳴した人々が、静かに繋がり始めることから、世の中は変わってきます。僕は、そう信じています。

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今夜、列車は走る

11 19, 2008
今夜、列車ははしる

呉映画サークルが主催する、呉シネマでの上映会。12月4日(木)に上映されるのは、今回が広島県内では初公開となるアルゼンチンの映画、『今夜、列車は走る』です。

鉄道民営化によって6万人もが失業した90年代アルゼンチンを背景に、それぞれの葛藤と愛情、希望へ向かっていく行動するエネルギーを描く、誇り高き鉄道員とその家族の物語。

「一度失敗したら、すべて終わり」のような現在の日本、「出口」が見つからずに自殺する人が3万人もいる日本の人々にこそ、この映画を観てほしい。

……本作品輸入・配給者/比嘉世津子





「見えない明日、救いはあるのか。いや、出口はきっとある」

今夜、列車は走る - Proxima Salida
呉映画サークル
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市川準さんの訃報に触れて

09 20, 2008
トニー滝谷 プレミアム・エディショントニー滝谷 プレミアム・エディション
(2005/09/22)
イッセー尾形宮沢りえ

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映画監督の市川準さんがお亡くなりになった。
18日の深夜まで普段通りに映画の編集をしていて、その後、食事を取っている時に倒れ、そのまま脳内出血で亡くなったという。まさに急死である。

僕はあまり映画を観るほうではないけれど、「あ、日本映画っておもしろいかも」と思ったのは、市川準の映画『東京兄妹』を観てからだった。何てことのない日常の風景を、たんたんと、やさしく、ユーモア溢れる視線で切り取ったその映像は、何度観ても飽きるということがなかった。市川準の映画は、観るたびにやさしい気持ちにさせられ、そして少し哀しくなった。その哀しいっていうのは決して悪い気分じゃなくて、何て言うか、生きてることや自分の周りにいる人間のことを、今より少しだけ肯定的な気分で見ることができるような、そんな感じ。ちっともうまく言えないな。

『東京兄妹』は10回は観た。そこから遡って、『会社物語』『つぐみ』と観た。そして、『トキワ荘の青春』『東京夜曲』『大阪物語』『ざわざわ下北沢』『東京マリーゴールド』と観ていった。あ、そうそう、この人の映画には、たいていどうしょうもない人々が登場する。そこがまたいいんだ。

『トニー滝谷』は、息を呑むような美しい映像と静謐な画面構成で、もうこの監督はこれ以上の映画を撮れないんじゃないかと思うくらい完成された映画だった。何度も観た。やはり何度観ても、素晴らしい映画だった。それでも、市川準はきっともっともっといい映画を作って、僕らに見せてくれるんだろうな、そう思っていた矢先の、早すぎる死だった。まだ59歳なのに。とてもとても、残念です。

asahi.com(朝日新聞社):映画監督の市川準さん死去 - おくやみ
デイリースポーツonline/市川準さん急死…59歳、脳内出血/芸能・社会

市川準 - Wikipedia
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写真映画「ヤーチャイカ」

07 26, 2008
ヤーチャイカ

通常の映画と違って、この作品の映像は静止しています。
動かない絵によって、目に見えるものから見えないものへの通路が、私たちの心に開かれる。



これが写真映画『ヤーチャイカ』。

主演は『ゆれる』の香川照之と、『萌の朱雀』の尾野真千子。監督、原作、脚本、語りは覚 和歌子。そして、谷川俊太郎。アートディレクターは葛西薫。

この青とオレンジの画面を見ただけで、ぞくりとしました。とても静かで、とても孤独で、とても美しい映画だと思います。広島で観られる日が楽しみです。

『ヤーチャイカ』 覚 和歌子 谷川俊太郎 監督作品

【インタビュー】「垂直方向の旅に出かけてみよう」 - 詩人・谷川俊太郎&覚 和歌子対談 (1) "ひとりで在ること"の静けさと豊かさ | ライフ | マイコミジャーナル
ほぼ日刊イトイ新聞 -だからからだ 谷川俊太郎と覚和歌子、詩とからだのお話。
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全然大丈夫

04 12, 2008
zenzen.jpg


「あー、憩いまくりたい」と思いました。サロンシネマでやってるみたいですよ。

映画「全然大丈夫」 オフィシャルサイト


予告編ね。
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ライラの冒険 黄金の羅針盤

12 09, 2007
GC.jpg


ここ数年で一番わくわくしたファンタジー小説が、この『ライラの冒険』シリーズでした。全三部作の構成で、最初の1冊目「黄金の羅針盤」が出てから、次が翻訳されて出るまでまた1年待ってというもどかしい思いをしたことを思い出します。まだこの小説を読んでいないという方は、ぜひご一読を。絶対に損はしませんよ。一度読み始めたら本を閉じられないというほどの、物語の至福を味わってください。

で、そうそう映画の話です。日本では3月に公開決定。サイトのほうでは、『あなたのダイモンに会いにいこう』というコーナーがあって、20の質問に答えていくと自分のダイモンがわかるようになっています。ちなみに僕はユキヒョウでした。

The Golden Compass
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いのちの食べかた

11 04, 2007
ourdailybread.jpg


前にここでも紹介したこともある映画『OUR DAIRY BREAD』が、いよいよ日本で公開されるみたいです。知られざる「食べ物」の生産現場。現代の食料生産事情の凄まじさに驚愕するでしょう。僕たちは日々、こうして作られた食べ物を食べているわけです。…広島はまだかなぁ。

いのちの食べかた
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めがね

06 22, 2007
megane.jpg


監督・脚本は、『かもめ食堂』の荻上直子。で、このキャストに眼鏡とくれば、好きな人はたまらんでしょう。どんな映画なのか、楽しみです。

映画「めがね」公式サイト
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移動式映画館 69'ners FILM

04 24, 2007
69f.jpg


カフェでギャラリーで屋外で。メジャーな映画、マイナーな映画とジャンルにこだわらず、さまざまな場所でさまざまな映画を上映する「69'nersFILM」シネマカフコンス。今日も全国各地を駆け回ってるみたいですよ。

69'nersFILM
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The Science of Sleep

03 24, 2007
aos.jpg


日本での公開はGWらしいのですが、今いちばん楽しみにしてる映画が、この『The Science of Sleep』。邦題は『恋愛睡眠のすすめ』なんてことになっちゃってますけどね。

監督はフランスのミシェル・ゴンドリー。ビョークやベックのミュージックビデオを撮った人くらいにしか知らなかったのですが、映画の予告編を観て一目惚れ。先日立ち寄ったレンタルビデオ屋で、たまたま手に取った『エターナル・サンシャイン』という映画が、これまたミシェル・ゴンドリーが監督していると知ってさっそく観てみました。キュートでロマンティックで知的。その映像はまさにセンス・オブ・ワンダーと呼ぶにふさわしい想像力。いや、ほんと楽しみだなぁ。

The Science of Sleep, from Warner Independent Pictures - The Official Site
映画「恋愛睡眠のすすめ」公式サイト
エターナル・サンシャイン


足でルービックキューブを揃える男、ミシェル・ゴンドリー。どうやってるのか考えてみてくださいね。


鼻でルービックキューブを揃える男、それもミシェル・ゴンドリー。あ、いや、これはやり過ぎです。
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広島県江田島市周辺の、瀬戸内海の島に住む人々の暮らしを伝えるフリーマガジンBridge[ブリッジ]を発行しています。

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このブログはブリッジ編集長である、岡本礼教が書いています。ここでは地域の話題からネットの話題まで、雑多にがりがり書き綴ります。日々試行錯誤。

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